【中学理科】優性遺伝?いいえ、これからは顕性遺伝です。

2017年10月13日

 こんにちは。 進学塾メイツ石神井公園教室の加納です。
 先日、ニュースで中学生の理科(生物)に関わる記事を見つけたので紹介したいと思います。
 その内容は、中学理科の生物分野の「遺伝」の単元で学習する「優性」と「劣性」という用語の名称が、それぞれ「顕性」と「潜性」という名称に変更されるというものです。(※この単元は中学3年時に学習します。)
 また、その記事によると、変更を発表した日本遺伝学会は、文部科学省にも変更の要望書を提出する予定とのことなので、今後教科書の記載が変わる可能性があります。

 最近はテレビの番組を中心に、メディアでもこのような話題は取り上げられることが多いので、例えば、「『冥王星』が惑星の区分から除外された」ことや「鎌倉幕府の成立は『1192年』(いい国つくろう鎌倉幕府)ではなかった」といった話は多くの人が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? そして、多くの場合で「学校で嘘を教えられた!」とか「覚えた意味がない!」といった批判・不満の声も同時に上がりますね。(これについてはまた別の機会に話をしようと思います。)

 そこで、上記の内容と同様に、今回の話も今後の小・中学生にとっては教科書の内容が変更になるかもしれない点では関係性の深い話なので、これを機会に少し詳しく見てみたいと思います。

変更の理由を考えてみよう!

 改めまして、なぜ学校の教科書にも太字で記載をし、長年使用してきた「優性」と「劣性」の名称を突然変更することにしたのでしょうか? せっかくですので、この文章を読んでくださっている方には、答えを聞く前に一度その理由を考えてみてほしいと思います。
 そもそも、この用語について知ってる人も知らいない人も、まずは「優性」と「劣性」という言葉を聞いて(見て)どう思われるでしょうか?
 私は常々指導の際には、単に言葉を丸暗記するだけではなく、言葉の文字と意味に注目するよう言っております。その理由は、私たちの使用している「漢字」という文字は「表意文字(※1)」といって、使われている漢字からその意味を読み取ることができるからです。逆に言えば、それを踏まえて用語の名称は決められているわけですので、用語を覚える際には、その漢字の意味と用語の意味を結び付けることで、覚えやすく、また思い出しやすくなるのです。

 さてさて、そう考えますと、おそらく多くの方が、「優性」の「優」は「優(すぐ)れている」、「劣性」の「劣」は「劣(おと)っている」の意味なので、あるものの性質の「優劣」を表した用語であると思われるのではないでしょうか?(用語の詳しい説明は後ほど記載いたします。)
 ちなみに、私自身はこの言葉を習った当初はそのように捉えていましたし、実際に当塾に通われている生徒の中にも学校で習った際に、そのように理解していた生徒がおりました。

…もうお分かりでしょうか? そうなんです。実はこれは大きな間違いなんです。きちんと考えていただいた方には申し訳ありません。しかし、これが今回変更を行うことになった理由に大きく関係しているのです。
 それでは、気になる答えは次の項目でお伝えします。

※1…漢字は言葉の意味以外にも表しているものがあるので、正確には「表語文字」に分類されるそうです。

名称と誤解

 まずは用語の確認をしたいと思います。
 この「優性」と「劣性」という用語は、生物を分類する際の一つの指標である形質(生物の形や性質のこと)という用語に対して使われる言葉です。(ちなみに、この形質は細胞の核の中にある染色体の遺伝子によって変わります。)そして、この形質の中で、ある種の純系同士をかけ合わせた際に子に現れる形質を「優性形質」、子に現れない形質を「劣性形質」と呼び区別をしています。
(中学生の皆さんは、メンデルのエンドウの種子の実験の話で、丸形が「優性形質」でしわ型が「劣性形質」だと学習します。)
 そうだとすれば、子に現れる形質だから「優秀な形質」、子には現れないから「劣等な形質」という意味で捉えても問題が無いようにも思えます。しかしながら、先述したように、これは決して形質の「優劣」を表した言葉ではないのです。実際、教科書の注釈にも次のような記載がありました。

「優性形質、劣性形質という用語は、その形質が子に現れるか現れないかという意味で使われており、その形質がすぐれているか、おとっているかという意味で使われているわけではない。」(『新編新しい科学3』東京書籍)

 つまり、実際は形質の「優劣」ではなく、あくまでも「現れやすさ」を示した言葉にすぎないということなのです。しかしながら、わざわざ注釈に書かなくてはならないということは、裏を返せばそれだけ誤解を招いているということであり、そうだとすれば「優性」「劣性」の用語は適切だとは言い難いのではないでしょうか。
 このような経緯から、今回はそれぞれを「顕性」と「潜性」に変更することになりました。
 「顕」には「顕著(けんちょ)」といった言葉があるように、「はっきりしている、目立つ」といった意味があり、「潜」には「潜在(せんざい)」といった言葉があるように、「表面には現れずに、内側に隠れている」といった意味があります。そのため、本来言い表したかった形質の「現れやすさ」を表現するにはこちらの方がしっくりくる気がしますね。

※ちょっとわかりにくいなと感じた方は、血液型の例だとどうでしょうか?
 血液型はA・B・Oの3つの遺伝子の内、2つが合わさって決まります。
 A型…AA、AO
 B型…BB、BO
 O型…OO
 AB型…AB
 これをみると不思議なことがありませんか?
 A型とB型は、Oの遺伝子が入ってるにも関わらずO型にはなっていません。つまり、このOの遺伝子が「劣性」遺伝子なのです。一方で、AやBの遺伝子は「優性」遺伝子なので、Aの遺伝子があればA型、Bの遺伝子があればB型、そしてAとBの「優性」同士が合わさればAB型となります。
 では、「劣性」遺伝子であるOの遺伝子を持つA型やB型の人とO型の人は、純粋なA型とB型、そしてAB型の人よりも何か劣っているものがあるのでしょうか?
いいえ、全くもってそんなことはありません。あくまでも、Oの遺伝子はAやBの遺伝子よりも「表には現れにくい」だけであって、決して能力的に劣っているなどといったことはないのです。しかし、この話を「優性」遺伝子、「劣性」遺伝子という名称で考えてしまうと誤解が生じやすいのは確かかもしれませんね。

まとめ

 以上のように、用語の名称の変更の話をもとに、その理由と根拠を見てみました。簡単に言ってしまえば、変更の理由は「誤解を招かないように」ということですが、これは非常に大切なことだと思います。
 残念ながら未だに無くならない「偏見」や「差別」の中にも「誤解」から生じているものはたくさんあるはずなので、それが少しでも解消にむかうきっかけとなるのならば積極的にやっていってほしいと思います。
 ただしその一方では、ただ単に「名称が変わりました」というだけではなく、その中身をきちんと理解・知ることが情報の受け手には大切なことだと思います。
 おそらくですが、教科書の記載が変更されても「優性」と「劣性」の名称は「顕性(優性)」、「潜性(劣性)」といったカッコ書きの形で残るのではないかと思います。そうなると、テストなどではどちらを書いても正解ですが、覚えやすいからと言って「優性」「劣性」で覚えた場合は、どこかで誤解を招く可能性が高くなります。
 だからこそ、勉強を通じて物事の「本質」を見る目を養う必要があるのです。それがあれば、名前に惑わされることなく正しい判断ができるのではないかと思います。
 話が大きくなりすぎてしまいましたが、この記事を読んでくださった方、特に学生の方には、少しでも「言葉の意味や物事の裏側を見る目」を意識していただければと思います。また、私も含め、教える側もそのことを踏まえた指導が必要だと改めて思いました。

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