【読書の秋】国語講師が薦める中高生のみならずご父兄の方々にも読んでもらいたい評論・エッセイ

2013年10月03日 コラム

今まで小説のおすすめをしてきたので、今回は評論・エッセイです。
小説に比べて読みづらさが格段に上がるので、ご注意。
僕がおすすめした小説をすべて読み切って物足りなければお読みになるのがいいと思います。

ではご紹介に。

1、『「自分の木」の下で』大江健三郎


日本人に二人しかいないノーベル文学賞を受賞した作家である大江健三郎の、「なぜ子供は学校にいかなければならないのか」について、本人曰はく「今までで一番易しい言葉で書いた」本です。小学校高学年向けに書いた本なのですが、流石は大江健三郎、難しすぎます!大学受験生が読んでちょうどいいです笑
「自分の木」という、筆者大江健三郎が子供の頃に頃祖母から聞いた話を中心に、子どもたちに自分たちの世代のことを理解してもらいたいという思いをもって書き上げたそうです。見えない読者たちに向かって、学びについてや戦争について、自分について様々に語ります。
これを読み上げると、大江健三郎という偉大な人間が、なぜ偉大なのかよく分かります。自分について真摯であり続ける。生きることについて改めて考え直す契機としてよいと思います。そして、自分も同様に、真摯に生きなければならない、と思うようになるでしょう。私もそうして、この書いている文章を推敲するのです…。

2、『下流志向』内田樹


 子どもが勉強をしなくて困っているお母様方必見。何故子供が勉強しないのか、いや、なぜ勉強をしなくなったのか。明快に解き明かす一冊です。日比谷高校中退から東京大学フランス文学部卒業という経歴で、酸いも甘いも全て経験している内田樹が簡潔でに朗らかな文体で記します。実際、内田本人が書いているように、縁側でおじいちゃんの話を聞く、くらいの心持ちで読めばいいと思います。
 実は筆者は大学在学中、学習塾を経営した経験があるとのことで…(どこかで聞いたことある話ですね…)。
 エコノミックアニマルと呼ばれるほど、盲目に資本主義化していった日本を待っていたのは、「消費者」化・オレ様化した子供たちの下流志向だった…ということが、豊富な具体例や引用によって分かりやすく説いてあります。子どもたちを理解するために必須の一冊。同様に、中高生が自分の態度を客観視し、反省するための本としても利用できます。

3、『人間の建設』小林秀雄・岡潔


 「有り体にいえば雑談である。しかし並の雑談ではない。(中略)全ての言葉は示唆と普遍性に富む。日本史上最も知的な雑談といえるだろう。」…新潮社紹介文。
 文系の巨匠小林秀雄と、理系の巨匠岡潔による対談。想定通りといえば想定通りですが、二人の口から出てくる言葉たちは全てが難解。にもかかわらず強烈に引き込まれてしまいます。理由を端的に言えば「かっけー」からです。詩的な表現、短く、明快な言葉。どれも迷いがなく自信(/確信)に満ち溢れています。格好いいとは、頭がいいとは、こういうことをいうのか!とつい憧れてしまうのです。知性は外へとにじみ出て、所作に窺えるものなのだ、と実感しました。雑談であるが故に、より一層伝わる二人の凄味、たまらないです。「情緒」を重要視し、真摯に生きる二人の、知的な会話を聴いてください。少し賢くなった気分を味わえます。結局は直観なのだ。かっけー。

4、『「甘え」の構造』土居健郎


 初めに驚いてほしいのですが、「甘える」という言葉は、実は、日本に特有の表現なのです。この本は1950年に学術論文として発表され、1971年に一般に出版されたやや古いものですが、しかしながら「甘え」という日本固有の現象を通して日本人を研究した文章で、今でも十分に通用し、日本人について考えるならば外せません。
本書で著者は「甘えるな」というありきたりの処世訓を説いたのではなく、日本は「甘え」の構造の中で社会を発展させてきたと分析します。しかし近年、「甘え」ではなく、一方的な「甘やかし」や独りよがりな「甘ったれ」が大量発生し、目立つようになってしまいました。本書を通じて、なぜ現代がいきづらい社会になったのか考えましょう。そして、もし自分が「甘ったれ」であるなら反省しなければならないのです。
「この本って、僕/私がモデルなのでは?」と感じてしまうほどクリティカルに日本人的感性を抉り出す研究書です。

5、『自由を考える』東浩紀・大澤真幸


 近年における最後の思想家として活動する東浩紀と、哲学・社会学系で幅広く活躍し人気を博す大澤真幸との対談集です。ちなみに評論は読みたくないという方は対談集から入ると良いかもしれません。臨場感が味わえて面白いので、僕は好んで対談集を選ぶことが多々あります。
 最近のものは遠慮したいですが、この頃の東浩紀の仕事は好きです。社会全体を把握し、それを単純に要約する能力には驚かされます。そして東はそこから更に未来を見据え、どう発展させていくか、どういう道を辿るのか、までビジュアル化するのです。時代を知りたければ東を読め!と言い切れます。
 テーマは「第三の審級」/「大文字の他者」/「大きな物語」の喪失から、私たちは今後この高度に情報化した現実社会をどのように生きていくべきか、です。2003年出版の本ですが、今読み返してみても学ぶところが多くあり、物事を考える際の下地として非常に有効です。

その他…
外した理由も説明しています。
外しはしましたが、全ておすすめです。

『考へるヒント』小林秀雄


 小林秀雄から一冊先行しているので、泣く泣く除外しました。「考ふ」とは「(か)・身(む)・交う」なのだ。筆者の、全てを交わらせて行う思考を体験せよ。

『日本の思想』丸山真男


難解であるため除外。また、この紹介を読む人向けではないと判断。

『知的複眼思考法』刈谷剛彦


頭がよくなる本。私たちが如何に前提や先見に囚われているかが明確になります。思考を広げるために必要なこととは。

『物語の哲学』野家啓一


難解であるため除外。また、大学で文学部に入ると必読となる可能性があるため今ではなくてもいいかなと。

『物語消費論』大塚英志


これは面白いのでおすすめ!…なのですが趣味に偏向している気がするので除外。

『反哲学入門』木田元


僕が哲学に興味を持った一冊。しかし哲学は毛嫌いされやすいので除外。

最後に

本を読むのが苦手な方へ
 本を読めるか読めないかは単純に慣れです。簡単なものから徐々にレベルを上げてみましょう。いつか自然と読めるようになると思います。そして、大江健三郎もおっしゃっていることですが、「一気に」読みましょう。読む場所と時間を自分で決めて(大江健三郎の場合は、家の近くの木の上に、本を読むための座れる場所を作ったそうです)、「一気に」読む。
そうすると意外にもいけるものです。あとは難しく考えすぎず、気軽に読めばよいのです。

反対に本を読むのが苦手ではない方へ
 少なくとも二度読みましょう。一度読んだだけでは力にはなりません。二度三度と繰り返しよんで、体の中に入れましょう。あるいはミステリーなんかではよくありますが、二度目に読んだときに「ここ伏線だったのか!」のようなことはよくあると思います。評論でも同じです。二度目三度目に読んだときにやっと繋がったり、理解出来たりするものです。100冊を一回ずつ読むのだったら、10冊を10回読むほうが、僕はいいと思っています(勉強に関しても同じです)。気に入る本を見つけて、それを何度も読むのがいいと思います。読んだ冊数が多ければ偉いということはありません。読んだ本を如何に内部に蓄積できるかが大事なのです。

全体へ
 「知」の世界に限界はありません。いくらでも広がり、かつ変化し得る自らの「知」を、自分の価値観などというくだらない拘りに固執して、それを固定させてしまうのはあまりにも惜しい(特に若いうちは)。自分以外のありとあらゆる知に対して自らを開き、それらを糧とする。それが大切なのだと思います。「知」を広げ、そして「知」をリンクさせる。それが「頭が良くなる」ということなのだと僕は信じています。

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